中世ヨーロッパの歯磨き文化

ヨーロッパは古代の歯磨きに用いられていた楊枝を中世でもそのまま使い続けたため、粗末な楊枝で取れない汚れはナイフやフォークで除去していました。現代の常識ではマナー違反に当たる行為ですが、当時はよく見られる光景だったのです。

ヨーロッパは楊枝の進化が遅かった一方、医学的にどのような口腔清掃が適しているかを探究しました。その結果、15世紀までには、塩化アンモニウム、塩化ナトリウム、サッカリンを歯に塗布することの効果が分かっていました。

では中世のアジアの歯磨き文化はどうだったのでしょうか。中国は西洋より優れた楊枝を先に開発していました。房楊枝と呼ばれる道具で歯を磨き、舌を清掃していたのです。宋の時代には歯ブラシまで登場したと言われています。

日本は基本的には中国から学び取って広まるのが文化のあり方でしたから、歯磨きもその例外ではありませんでした。ただし宗教的な儀式としての意味が加えられてアレンジされたため、歯磨きの重要性が神道の観点で説明されることはありました。

例えば口を漱ぐことは禊に当たると考えられたのです。道具は中国に倣って楊枝を用いるのが基本でした。特に貴族や僧侶は毎日歯磨きするのを習慣としていたことが記録に残っています。庶民に歯磨きの文化を広めたのは仏教の力であり、その影響もあって曹洞宗では楊枝を重視する向きがあります。

ところで中世の時代に世界中で歯磨きの道具として使われていた楊枝ですが、どのような形状だったのでしょうか。またどのように使用されたのでしょうか。

その仔細を記した書物が、「正法眼蔵」です。この書物は歯磨きの仕方に加えて舌の洗い方、楊枝の捨て方まで記されているため、当時の実態を知る貴重な文献と言えます。

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